フェリチン鉄を知って鉄不足対策
鉄分は体内にフェリチン鉄として貯蔵することができ、鉄分不足に備えることができます。特に女性や成長期のお子さま、スポーツをする方は鉄分が不足しやすく、フェリチン鉄について知っておくことは重要です。本記事では、フェリチン鉄とは何か、具体的な役割、日常生活での取り入れ方など、詳しく解説します。
フェリチン鉄とは?
フェリチンは鉄分の入れ物
フェリチンは、主に肝臓、脾臓、骨髄などに存在し、体内の鉄分を蓄えるたんぱく質です。フェリチンは一つの分子で数千個の鉄原子を蓄えることができ、体内の鉄分濃度を調整する役割があります。鉄分がたくさん入る、ボールのような入れ物です。
フェリチンと鉄分の関係
フェリチンの中に鉄分が入ったものを一般的にフェリチン鉄と呼びます。鉄分は私たちに欠かせない栄養素ですが、一方でむき出しの状態では活性酸素(フリーラジカル)を発生し、細胞を傷つけてしまいます。フェリチンの中にくるまれることで、鉄分を安全に貯蔵できるのです。
フェリチンは貯蔵した鉄分を、必要に応じて血液中に送り出します。この仕組みによって、鉄の過不足を防ぎ、安定して鉄分を供給します。鉄分は赤血球の生成に必要不可欠であり、酸素を全身に運搬するために重要です。
鉄分の役割
鉄分は赤血球をつくることを助けます。赤血球というと、貧血の代表的な症状である、めまいや立ちくらみを連想される方も多いかもしれません。めまいや立ちくらみは脳の酸欠状態によってあらわれる、自覚しやすい変化です。酸素はエネルギーを作り出すのに欠かせないので、鉄分が不足すると、脳以外にも全身で酸欠状態=エネルギー不足になってしまいます。なんだかすっきりしない、疲れが抜けない気がする、といった方も要注意です。
また、鉄分は体内でコラーゲンを合成するためにも必須の栄養素です。鉄分はコラーゲンをつくる酵素の、重要な部品だからです。また、酵素にくっついた鉄が錆ないように保つため、ビタミンCも必要です。コラーゲンというと、美容を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。実はコラーゲンは皮膚や髪、爪だけでなく、血管や筋肉、骨、関節、眼など、体内のあらゆる組織を形づくる、土台のような存在です。若々しく健康な毎日に欠かせない栄養素です。
フェリチン鉄が含まれる食品
- 豆類:フェリチン鉄は大豆などに含まれます。豆腐にも含まれるという報告があります。
- レバー:一部フェリチン鉄も含まれますが、ヘム鉄の割合の方が高いです。
フェリチンはたんぱく質なので加熱に弱いと考えられています。一方で加工後の豆腐に含まれるという報告もあります。豆腐なら毎日の食事にも取り入れやすいです。豆腐に含まれる鉄分は100gあたり約0.8mgとされているので、1日分の鉄分を6.8 mgとすると、豆腐の約2.4丁分です。豆腐だけで賄うことは難しいかもしれません。
(1日分=栄養素等表示基準値: 6.8mg、1丁=350gとして計算)
フェリチン鉄には植物性と動物性があります。植物にとっても、フェリチン鉄は鉄分を安定した形で蓄え、酸化ストレスから細胞を保護する役割があります。また、発芽の際に鉄分を効率よく利用するために重要です。このように、フェリチン鉄は自然界に広く存在する、重要な成分なのです。
フェリチン鉄の吸収
大豆由来のフェリチン鉄の吸収率は約30%という報告があります。これはヘム鉄と同じくらいの吸収率です。自然界にも存在し、自然な範囲で効率よく吸収できます。
フェリチン鉄はエンドサイトーシスと言って、大きな分子を細胞内に取り込む仕組みで吸収されます。胃で消化される部分もありますが、バラバラになりかけた状態のフェリチン鉄でも、エンドサイトーシスで吸収されることが分かっています。
消化吸収の過程で活性酸素(フリーラジカル)を発生しないため、体にやさしいです。活性酸素は従来の鉄サプリでみられる胃のムカムカに関係するとされています。
つまり、フェリチン鉄を食事として摂取することで、効率よく安心して鉄分を補えます。
ヘム鉄との違い
自然界に存在し、吸収効率も良い鉄分の補給源にヘム鉄があります。ヘム鉄は血液中で酸素を運んでくれる鉄分で、動物性です。植物性のヘム鉄は存在しないと考えられます。レバーなどに豊富に含まれていて、食事から補うことができます。市販のヘム鉄サプリメントは豚の血液由来のものが主流です。
キレート鉄との違いとフェリチン鉄の安全性
キレート鉄は、人工的にアミノ酸と結びつけられた鉄分で、自然界には存在しません。アミノ酸と同様に体内で吸収され、吸収率が非常に高いのが特徴です。吸収を調節するブレーキがなく、過剰に吸収されることがあります。鉄分が過剰になると、フェリチン鉄として蓄積されます。フェリチン値が異常値になることから、混同されることがありますが、フェリチン鉄自体に害はありません。過剰な鉄分の指標として、フェリチン鉄の検査が行われます。一方、栄養素としてのフェリチン鉄は、自然界に存在していて、正常に吸収する仕組みが体に備わっています。
フェリチン鉄のサプリメントが危険ではないか、副作用があるのではないか、といった疑問を持たれる方も少なくないですが、キレート鉄サプリメントのような過剰摂取のリスクがあるわけではありません。正しい知識で判断することが大切です。(ただし非ヘム鉄よりは吸収効率がいいので、摂取の目安量は守ることをお勧めします)
なお、輸入サプリメントに含まれるキレート鉄と、医薬品である鉄キレート剤は似ているようで異なります。鉄キレート剤は、鉄分がくっついていない状態で体内に入り、余分な鉄を吸着し、排出を助けるお薬です。医学ではキレート化の技術で体内の鉄分濃度をコントロールするのです。これはお医者様が検査に基づいて行う「治療」であり、栄養学の範疇ではありません。一方身近なところでは、非ヘム鉄の吸収を助けるビタミンCも、広義にはキレートの一種です。また、化学的にはヘム鉄もキレートの仲間です。ただ、「キレート鉄」というと一般的に、アミノ酸で鉄分を挟み込んだ合成成分のことを指します。当記事でもサプリメント原料としてのキレート鉄について解説しました。
フェリチン鉄サプリメントの利用
近年、フェリチン鉄はサプリメントで手軽に効率よく摂取することができるようになりました。大豆由来のものが主流です。
メリット
- 胃がムカムカしにくい: 活性酸素(フリーラジカル)を発生しないやさしい鉄分補給で、胃に負担をかけません。
- 鉄臭さを感じにくい: 毎日続けても苦にならず、鉄分補給がスムーズです。
- 植物由来で安心: 自然界に存在する栄養素を使用しており、やさしい成分です。
- 吸収効率がいい: 自然な形でしっかりと吸収され、効果的に鉄分を補えます。
デメリット
- 大豆アレルギー: 大豆アレルギーの方は摂取を避ける必要があります。最近ではエンドウ豆由来のフェリチン鉄サプリメントが登場しています。
- 添加物の使用: サプリメント全般ですが、栄養素以外の成分(賦形剤など)が含まれていることがあります。購入時には、表示内容をよく確認することをおすすめします。
- 価格が高い: 天然のフェリチン鉄は製造過程に手間がかかるため、価格が高めです。品質や効果に見合った価値を重視する方に向いています。
他の大豆食品でアレルギー症状が出ない方でも、ごくまれにアレルギー症状例があります。体調に変化があった場合は利用を中止して、様子をみましょう。
こんな方におすすめ
- 鉄不足でお悩み
- 成長期のお子さま
- 疲れやすい、すっきりしない
- スポーツをされる
- 従来の鉄サプリでは鉄臭さが気になる
- 鉄サプリで胃のムカムカが気になる
- 化学合成品や動物の血液由来は避けたい
選び方と注意点
他の栄養成分も含まれるものや、カプセル状のもの、粉状のものなど様々な商品があります。続けやすさも意識して選ぶとよいでしょう。
サプリメントを選ぶ際は、信頼できるメーカーの製品を選ぶことも重要です。サプリメントは販売者と製造者が別の会社であることが多いです。誰がつくっているのか、表示を見ただけでは分からないことが多いので注意が必要です。
添加物は食品表示の原材料表記を見ることで、ある程度確認ができます。
まとめ
フェリチン鉄は、体内の鉄分を効率的に管理し、健康を維持するために欠かせません。直接摂取することができるので、日常の食生活にフェリチン鉄を取り入れることで、鉄不足対策が手軽にできます。適切な食事を通じて、健康的な生活をサポートしましょう。