小さなサプリの物語


ここに、「クラフトサプリ」を立ち上げるまで、
そして今、どんな想いでこのひと粒を届けているかを綴ります。

 

「娘には、余計なものを摂らせたくない」

娘の小さな手、余計なものは食べさせたくないという想い

それが、すべての始まりでした。

娘が生まれたとき、思いました。
「この子が口に入れるものは、本当に必要なものだけを」

世の中には、便利なものや華やかなものがあふれている。
でも、本当に大切なものって、実はもっとシンプルで、
目立たないくらい素朴なものなのかもしれない。

 

限界の先にあった、原点

仕事に追われる日々

私は、かつて仕事のストレスで心を壊しました。

私が生まれ育った東かがわ市は、小さな町。
特産品である和三盆の工場で働いていました。
しかし車がなければ生活が難しく、生まれつき視力の弱い私には、暮らしに不安がありました。
家族と話し合いを重ねた末、故郷を離れ、神戸での新しいスタートを選びました。

神戸では、健康食品メーカーに転職し、商品開発を担当。
次第に責任あるポジションを任され、ヒット商品にも恵まれました。
やりがいも手応えもありましたが——

知らず知らずのうちに、心がすり減っていったのです。
通院、薬、入院、そして家族とのすれ違い……

「もう、これ以上は無理だ」

そう思ったとき、ふと心に浮かんだのは、故郷・香川の風景でした。

 

空っぽになった実家の工場

私の実家は、小さな印刷工場を営んでいました。
祖父が立ち上げ、家族みんなで守ってきた工場。
東かがわ市の特産である手袋のタグやラベルを手がけていました。

東かがわ市 実家の印刷工場


でも、時代の流れとともに手袋工場の多くは海外に移転。
やがて実家の印刷工場は廃業。

神戸で心身ともに限界を迎えたあと、私は香川の実家に戻りました。
そこで目にしたのは、静まり返った工場の姿でした。

空っぽになった印刷工場

子どもの頃から慣れ親しんだ、インクの匂いと、機械の音——
そこに残っているのは静寂だけ。
工場の空っぽは、どこか自分自身と重なりました。

「ここからもう一度はじめよう」

そう決めた瞬間、心に静かな覚悟が生まれました。

その決意を伝えたとき、弟が「一緒にやろう」と言ってくれました。
視力が弱く車の運転ができない弟にとっても、地元で働ける場所は限られていました。
同じような想いを抱えていた弟の存在が、私の背中を押してくれたのです。

関わるすべての人が、ありのままであれることを目指して。
私たちの小さな挑戦の始まりでした。

 


「娘にとって、誇れる町にしたい」

 

和三盆のふるさと東かがわ市引田

娘が生まれたことで、私の中にはもう一つの想いが芽生えました。

「この町を、娘にとって“誇れる場所”にしたい」

急激な人口減少、高齢化、耕作放棄地の拡大——
地方が抱える課題は深刻です。

この町が、派手である必要はありません。

でも、いつか娘が大人になったときに、  
「この町で育ってよかった」と胸を張って言える、
そんな場所にしたいのです。

たとえすぐに目に見える成果がなくても、
この町の「大切なもの」を次世代に残していくことが、
今ここに生きる私たちの役割のはずです。

 

そして誕生した「クラフトサプリ」

職人手打ちのクラフトサプリの粒たち

すべては、「娘に安心して食べさせられるサプリをつくりたい」という想いから。

健康食品の業界にいたからこそ知ってしまった、見えにくい課題。

  • ほとんどが中国などでつくられる合成ビタミン
  • 表示を見ても誰がつくったか分からないサプリ
  • そして、当たり前のように使われている添加物

だから私は思いました。
「毎日口にするものこそ、“やさしさ”でできていてほしい」

辿りついたのは、和三盆という日本の伝統素材。
そして、すべて手づくりで仕上げるという道でした。

和三盆の職人として培った製造の経験、
健康食品業界で磨いた研究開発の知識、
そして何より、娘への愛情。

これらすべてが重なって、私たちの「クラフトサプリ」は生まれたのです。

 

クラフトサプリとは

クラフトサプリ栄養お干菓子脳粒画像

クラフトサプリは、栄養を補える、和三盆のやさしいお干菓子です。

  • 水なしで食べられるおやつの手軽さ
  • 子どもも安心して食べられ、完全植物性
  • 体にやさしい天然素材だけでできている

例えば、使用しているビタミンCは、インドの果実「アムラ」由来の天然成分。
鉄分は、大豆からとれる「フェリチン鉄」。胃への負担も少なく、においも気になりません。

そして、なにより大切にしたのが——
添加物を一切使わずに固める技術。

これを実現するために、構想から4年の歳月と、数えきれない試作を重ねました。
それは、「売れるものをつくる」のではなく、
「本当に食べてもらいたいものをつくる」という信念からです。

 

誰が、どこで、どうつくっているのか

クラフトサプリ和三盆は職人の手で責任をもってつくられている

クラフトサプリはすべて、私たち職人が香川県東かがわ市の自社工房でつくっています。
大量生産もできません。広告映えもしません。
でも、誰が、どんな想いで、どうやってつくっているのかが見える商品です。

これは私たちの誇りであり、クラフトサプリが生まれた意味そのものです。
開発、製造、出荷まですべて一貫して行うことで、お客さま一人一人と向き合うことができる。
私たちはむしろ、これが当たり前のことだと思っています。

 

未来を育てるサプリメント

和三盆の原料を栽培する東かがわ市のサトウキビ畑

私たちの故郷、香川県東かがわ市は、
今、深刻な過疎化に直面しています。
人口は減り続け、空き家や耕作放棄地が年々増加。
「消滅可能性自治体」とさえ言われる現実があります。

けれど、そんな町にも、まだ希望の芽はあります。

クラフトサプリの主原料である和三盆は、四国東部だけでつくられる、
とても貴重で、繊細な砂糖です。
その原料となる さとうきび も、東かがわ市で栽培されています。

もし、このクラフトサプリが広がれば——
和三盆の需要が安定し、農家さんが安心してつくり続けることができる。
そして、今は草木が生い茂る耕作放棄地が、
未来のさとうきび畑へと生まれ変わっていく。

それは、一見とても小さな変化かもしれません。

でも、誰かが「必要としてくれている」と感じられること、
それが、この町の営みや、人のつながりを、確かに育てていくと信じています。

 

想いを、少しずつかたちに

印刷工場をサプリ工場へ 配管の工事印刷工場をサプリ工房へ改修工房工事写真クラフトサプリ工房の内装サプリ工房内装をすすめるクラフトサプリの工房と職人

壮大な理想と、小さな試作品だけを手に、私たちは一歩を踏み出しました。

まず不安ながらも起業への想いを受け止めてくれた妻。
ありがとう。娘のことを任せ、事業にうちこむことができました。

資金を集めるために、何度も事業計画を書き直しました。  
金融機関に幾度と足を運び、ようやく融資が決まりました。
改装は自分たちでできることはDIYし、
古い工場が少しずつ工房に変わっていく様に、希望を感じました。

パッケージは、香川で老舗の猪子デザイン研究室さまにお願いし、
クラフトな雰囲気を出しつつも、品のある意匠に。

そしてクラフトサプリの命とも言える「木型」は、
日本に数人しかいない職人の一人、香川の市原先生に頼み込み、
手彫りで仕上げていただきました。

木型職人市原先生に彫っていただいたクラフトサプリの木型

ひとつひとつに、時間と手間と、たくさんの人の想いが重なっていきました。

そして——
2024年9月、ようやくクラフトサプリを発売することができました。

職人による和三盆仕立てのクラフトサプリ誕生

「家族の健康のために」
「この町の未来のために」

と始めた挑戦が、ようやく、かたちになった瞬間でした。

 

人の心

心をこめてつくる無添加のクラフトサプリ

クラフトサプリは、すべてのこだわりと想いを詰め込んだ自信作であり、
いわば私の人生の集大成でした。

でも、思ったようには売れませんでした。
広告費、営業、人件費…現実は厳しいものでした。

売上が伸びずに募る、焦りとプレッシャー。
余裕をなくしていた私は、いつしか弟への接し方もきつくなっていました。
ある日、弟にこう言われたんです。

「としあきさん、最近ちょっと…怖いよ」

その言葉が、心に深く刺さりました。
「誰もがありのままでいられる社会をつくりたい」と言っていた自分が、
もっとも近くの存在に、やさしくなれていなかった。

そこでようやく、自分を見つめ直すことができました。
人に頼ること、時には弱さを見せること、一人で抱え込まないこと。
その大切さを、本当に知りました。

この経験が、私たちを変えました。
私は少しずつ、人の心を取り戻していきました。
地道に、丁寧に、目の前のお客さまに向き合うこと。

その先に、
「ありがとう」「ようやく出会えた」という声が少しずつ届くようになりました。

 

クラフトサプリは、“再生”の物語

クラフトサプリの粒は天然由来で素朴

クラフトサプリは、

  • 娘がくれた勇気
  • 故郷への愛情
  • 未来への希望

すべてが詰まった、“私たちの再生のかたち”です。

だから、私たちはこう思っています。

「売るためではなく、“届けるため”につくる」

クラフトサプリは職人の想いと技が詰まった和三盆のお干菓子


最後に

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。

クラフトサプリは、効率も、利益も、広告映えもありません。
それでも私たちは、今日もこの手で一粒ずつ、サプリを打っています。

「味わいから心を、栄養から体を、地域とのつながりから社会を健康に」

この想いを込めて、これからもつくり続けます。
どうか、必要としている方に届きますように。

 

この記事を書いた人

クラフトサプリ工房竹蔗代表岡田峻明
岡田 峻明(おかだ としあき)
クラフトサプリ工房竹蔗 代表。
香川県東かがわ市引田出身で、日本初のクラフトサプリ職人。
和三盆職人・サプリメント開発者としての経験を活かし、「娘にも安心して食べさせられるサプリ」を目指してクラフトサプリを考案。
地元と家族を大切にしながら、「つくり手の顔が見えるものづくり」にこだわっている。